家庭備蓄の啓発コンテンツ

避難生活と在宅避難

わが家はどこで1週間を過ごすのか。それが決まると、備えの置き場所が決まります。

避難先は、避難所だけじゃない

「避難=避難所に行くこと」と思い込んでいる方が多いのですが、 避難とは生命を守るために安全な場所へ移ることのすべてを指します。 発災後の生活の場には、大きく4つの選択肢があります。

① 避難所

学校の体育館や公民館。物資と情報が集まる拠点ですが、プライバシーは限られます。自宅が危険な場合の基本の選択肢。

② 津波避難ビル・高台

津波から緊急に生命を守る場所。「一時しのぎの場所」なので、その後どこで生活するかは別に考えておく必要があります。

③ 在宅避難

家が安全なら、住み慣れた自宅で過ごすのが体にも心にもいちばん楽。ただし電気・水道・ガスが止まった状態で暮らす備えが要ります。

④ 縁故避難

親戚や知人の家に身を寄せる方法。安全・安心の面ではいちばん確実。日頃から「いざという時はお互いさま」と話しておきましょう。

大事なのは、災害の種類によって答えが変わることです。 津波なら避難ビル→その後は縁故へ、台風なら最初から縁故か在宅、大地震で家が無事なら在宅—— わが家に合わせた備え方の手順で、家族の顔を思い浮かべながらシナリオを描いてみてください。 そして必要なものを、必要な場所で使えるように備えます。全部を家に置く必要はありません。

避難所のリアルを知っておく

避難所は「行けば何とかなる場所」ではなく、「みんなで何とかする場所」です。 物資が届くまで数日かかることもあれば、毛布や食料が人数分ないこともあります。 仕切りのない床の上の生活が何週間も続くこともあります (実際の避難所の様子は内閣府 防災情報のページ「避難所の生活環境対策」で確認できます)。 知っておきたい現実を3つだけ。

✗ 床に直接寝る 底冷え・ほこり・足音が体力を削る ✓ 床から離して寝る 段ボール箱+マットで寝床を床から離す (キャンプ用マット・コットがあれば最強)
避難所の寝床の鉄則は「地べた禁止」。段ボールベッドやマットで床から離すだけで、寒さと疲れがまるで違います
  • 床の生活は体にこたえる——地べたに直接寝ると、寒さと硬さで体力を消耗します。マットや段ボールで寝床を床から離すのが鉄則。キャンプ用のマットや簡易ベッドがあると段違いに楽です
  • トイレが最大の問題——水が止まればトイレは流れません。トイレを我慢するために水分を控えると、体調悪化やエコノミークラス症候群につながる悪循環に。携帯トイレは人数×日数分を
  • プライバシーと音——耳栓とアイマスクが眠りを守ります。防災袋に入れておきましょう

エコノミークラス症候群(長時間同じ姿勢でいることで血栓ができる症状)は、避難生活と車中泊の大敵です。 着圧ソックスを家族の人数分備えておく、こまめに足首を回す・足指でジャンケンをする、 トイレを気にせず水分をとる——この3点で予防できます。 病院でも血栓予防に使われる着圧ソックスは、普段のむくみ対策にも使えるので、まさに「いつも」と「もしも」の兼用品です。

在宅避難の心得——遠慮しない、隠れない

家が安全なら、在宅避難は立派な選択です。 住み慣れた家で過ごせて、避難所の混雑を減らすことにもなります。 ただし、在宅避難には「あるある」の落とし穴があります。 避難所に行かないと支援を受けられない、と思い込んでしまうことです。

  • 在宅避難でも、避難所で物資を受け取ってかまいません。支援の相談もできます。夜だけ避難所に泊まるのもありです
  • 水や食料の配給を受け取るための容れ物(ポリタンク・給水袋・大きめの袋)を用意しておきましょう
  • 在宅避難を考えていることを、家族や友人・近所に伝えておきましょう。誰にも知られずに自宅で孤立するのが一番危険です
  • 電気・水道・ガスが止まった自宅で暮らす想定で、1週間分の水・食料・携帯トイレ・カセットコンロを。分量の目安は備蓄のきほんへ

在宅避難の食料は「日常で食べながら備える」ローリングストックが基本です。 選ぶのが大変な非常食は非常食26種セットのようなセットを土台に、 家族の好みと必需品を書き足していくのが現実的です。

縁故避難と、地域で分けて備える

親戚・知人宅への縁故避難は、安全面でも精神面でもいちばん確実な避難です。 台風のように事前に分かる災害なら、「危なくなってから」ではなく前日に移動してしまうのが理想。 日頃からお願いしておき、可能なら着替えや常備薬など一部の備えを置かせてもらうと、いざという時に身ひとつで動けます。

もうひとつの選択肢が、地域で分けて備えることです。 各世帯の備蓄を詰めた箱を避難スペースに先に運んでおく「生命の箱」のような取り組みや、 マンションの防災倉庫・集会室に食料や調理器具を蓄える方法があります。 たき火やかまどが1つあるだけでも、避難生活の温かさはまるで違います。

避難スペースの脇でドラム缶に火を起こして暖を取る様子
地区の防災訓練でのドラム缶の火起こし。寒い季節の避難では、火が1つあるだけで体も気持ちも保ちます

→ 防災袋のつくり方(持ち出す備えはこちら)
→ 豪雨・台風の備え(前日に動くための型)

本ページの内容は、高知大学 防災推進センター 大槻知史教授の防災教育・被災地調査の知見をもとに構成しています。