家庭備蓄の啓発コンテンツ
いつも防災
防災は、楽しくないと続きません。「いつも」と「もしも」をつなぐ続け方の話です。
防災を「特別な日」にしない
防災が続かない理由は、はっきりしています。 怖いことを考えるのは気が滅入るし、毎日の暮らしだけでもお金と時間と気持ちのやりくりで手一杯だからです。 毎月何十万円も生命保険を掛けられないのと同じで、防災にだけコストを注ぎ続けることは誰にもできません。
だから発想を逆にします。 普段の暮らしの中で「楽しい・役立つ・お得」なものや体験が、災害の時にも役立てばいい。 防災のための特別な何かを増やすのではなく、いつもの生活に防災をひとつまみ足す—— これが「いつも防災」の考え方です。 防災は人生の目的ではなく、楽しく暮らし続けるための手段なのですから。
「土手の花見」という知恵
昔の人の治水の知恵に、こんな話があります。 冬の川の土手は、霜や氷で緩んでしまう。 そこで土手に桜並木を作ると——春にたくさんの花見客が集まり、 梅雨の増水の前に、土手は自然としっかり踏み固められる。
誰も「防災のために土手を踏みに行こう」とは言っていません。 みんなは花見を楽しんだだけ。でも、それがそのまま防災になっている。 楽しさで人を巻き込む仕組みこそが、いちばん強い防災なのです。
この花見会のように、備蓄の入れ替え時期の非常食をみんなで食べてみるのは一石三鳥です。 廃棄が出ない、味を知れる(災害時に「食べ慣れないものが喉を通らない」を防ぐ)、そして単純に楽しい。 高知県のいの町には、防災から始まった活動が、いつのまにか「みんなで花見をするために河川敷を花畑にする」活動になった地区もあります。
まちの実例——いつもの集まりに、防災をひとつまみ
「いつも防災」は、地域の集まりでこそ真価を発揮します。 新しく防災組織を作るのではなく、すでにある集まりに15分だけ防災を足すのがコツです。
- 体操の集まりの後に、みんなで「地震から身を守る動き」を1回やってみる(もちろん合図をしてから)
- サロンの最後に15分だけ防災の話。市の担当者を呼んで、家具固定の補助にみんなで申し込む
- 生涯学習の集まりで防災袋の中身を考えて、次回に持ち寄って「中身の自慢大会」
- いつもの犬の散歩コースを、避難場所までの道に変えてみる(地域の見回りを兼ねて)
- 買い物ついでに、みんなで100円ショップの防災コーナーを見て回る
家庭でできる「ちょい足し」集
どれも今日からできて、お金がほとんどかからないものばかりです。
- 水筒と一緒にラムネを持ち歩く(熱中症・低血糖対策の「小さな備蓄」)
- 枕元に靴とライトを置く(寝室の見直しとセットで)
- キャンプ用品を「防災籍」に入れる——テント・マット・ランタンは最高の避難生活グッズ。庭遊びやバーベキューで使いながら備える
- ペットボトルに水を入れて太陽で温め、足裏マッサージに使う(避難生活のエコノミークラス症候群対策の練習)
- 水・レトルト・燃料はまとめ買い→日常で使う→使った分だけ買い足す(ローリングストック)
- 家族で家具固定と片付けをして、ごほうびに外食(子ども・孫を呼ぶ口実にもなります)
- スマホの勉強会を兼ねて、緊急速報や天気アプリの設定を家族で確認
- 離れて暮らす家族と「危ないときは連絡して」と約束(逃げなきゃコール)
いちばんの備えは、つながり
阪神・淡路大震災では、倒壊した家から救出された人の多くを助けたのは、 消防や自衛隊ではなく家族や近所の人たちでした(内閣府 防災白書より)。 どれだけ物を備えても、最後に人を助けるのは人です。 いつもの挨拶、いつもの集まり、いつもの支え合い——それ自体が、いちばんの防災資源です。
防災スタジオが商品の販売ではなく啓発を目的に掲げているのも、同じ考えからです。 モノの備えは入口にすぎません。 「いつも」の暮らしが楽しくなって、それが「もしも」の時に家族と地域を守る—— そんな備えのかたちを、これからも紹介していきます。
→ わが家に合わせた備え方(考え方の全体像)
→ 避難生活と在宅避難
本ページの内容は、高知大学 防災推進センター 大槻知史教授の「いつも防災」の研究・実践をもとに構成しています。 写真は大槻教授のご提供によるものです。